2018年4月23日月曜日

寂しい風景

 若いころから国内を旅した。最近どこも同じような風景に出くわす。ことに新幹線での旅は味気ない。車窓から眺めていてもことに駅に近づくほど個性を感じないつまらない風景が広がる。だからと言って言い訳するわけではないが、すぐ寝入ってしまう。寝るのが得意なのだ。起きていても若いころのワクワク感を感じることが少なくなってしまった。
 在来線にはまだ名残りが残っている。岡山―総社をつなぐ桃太郎線は実に楽しい。反対側のホームに滑り込んでくる列車に走りながら
「待ってえー」
 叫ぶと、
「まってるよー。急がないでいいよー」
 と、返ってくる。小学校から高校までお世話になった今はなき近鉄八王子線に何処か似て懐かしい。のどかな田園風景もいい。たまにあぜ道を鴨が歩いていたり、子どもが遊んでいたりして、振り返ってしまう。すっかり忘れていた思い出のよう。ローカル線にこそ人間の営みを感じてしまう。
 夜行列車が朝着くと、たいていの駅のホームには洗面用の水道が並んでいて、しばらくある乗り換え時間に顔を洗った。名の知れた駅では駅弁売りがいた。車窓に売りに来るのを買うのが楽しみだが、親と一緒の時だけだ。一人旅では滅多に買えない。2週間に及ぶ高校の修学旅行では南九州へ行った。途中出水市あたりで夜中に列車が立ち往生した。そっとドアに触れたら開いた。まだ動きそうにない。そのまま外に出て、九州の大地に立ち、満点の星を仰いだ。あのススキ野原はあるだろうか。見たいと思う。


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