2015年9月29日火曜日

秋分の日、後日談2

 秋分の日の旅から帰って、1枚のはがきが待っていた。
 9月13日のお客さんからだった。あれから一週間。地元で物件が見つかり助産院を開くことに決めたという嬉しい知らせ。
 地球の胎内に入って行くとき、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」をふと思い出した。天上から降りてきた蜘蛛の糸にも似た一錠の鎖だけがたよりだ。鎖が壁にしっかり固定されているかどうかさえ確かめるすべもない。信じて行くしかない。真っ暗闇の中、ひたすら垂直にのぼる。途中、ところどころに置かれたロウソクがそこだけ明るく照らしている。頭上に光はない。時間も距離感もない移動が続いた。気が付くと、頭の上がほのかに灰色になり、やがて奥の奥の院が開けた。
 行を終えて戻る。戻りこそ大変なのである。若い行者が「ここまできて落ちた方はありません。ゆっくり降りてください」励まされ全員無事胎外へ出た。これが出産なのだ!若い行者の言葉が助けとなり私はゆっくり落ち着いて生まれ出ることができた。下山後、はじめて時間を確かめる。心配された私の足は夕べ温泉街で求めたトレッキングシューズと山に慣れた同行の友のおかげで快調。3時間かかるといわれたところ、半分ほどで終えたのだった。人の大小様々な助けを得て、産まれ、生き、帰って行くのだとわかった。人が受ける最初の助け。陰ながら応援しています!

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